【雑記】村田修一、引退。今だから読んでほしい一冊の本がある

9月28日、東京ドーム。
読売ジャイアンツ対DeNAベイスターズ戦の試合前に、一人の男の引退セレモニーが行われました。

村田修一、37歳。

いわゆる”松坂世代”の一人として甲子園を沸かせ、日大を経て02年のドラフトで横浜ベイスターズ(当時)に入団しました。
その後、2011年のオフにジャイアンツに移籍。念願のリーグ優勝にも貢献し、中軸打者として活躍していましたが、2017年のオフに戦力外通告を受け、セ・パ各球団の獲得オファーも届かず、今年はBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスでプレーをしていました。

このBCリーグはプロ野球(NPB)の二軍とは異なり、NPBを夢見る選手たちがプレーする独立リーグという場所。一回り以上も下の選手たちが多い中で、村田も一緒になって汗を流してNPB復帰を目指してプレーしてきました。年俸は2017年の2億2000万円から250万円(金額は推定)まで下がりました。
それでも村田修一は過酷な環境のもと、必死に栃木で夢を追っていました。

結局、獲得期限の7月末までにオファーは届かず。
9月9日に行われた栃木のシーズン最終戦後に、現役引退を発表しました。

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なぜ村田修一は謝ったのか

東京ドームの引退セレモニーで村田は現役生活を振り返り、感謝の言葉を述べました。
シーズン終盤のクライマックス出場がかかった大事な試合の前に、このような場を巨人が設けてくれたこと。DeNAが賛同してくれたこと。そして無所属となった自身を拾ってくれた栃木にも。

村田は、レフトスタンドの一角に集う古巣・ベイスターズのファンに対しては、声を震わせながら謝罪の言葉を口にします。

「チームを強くすることはできませんでした。横浜ファンの皆様、本当に申し訳ありませんでした」

この言葉には、古巣に対しての単なる挨拶以上のものが詰まっています。
そして、それを知るためにぜひ読んでほしい一冊があります。

4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史

前身の大洋ホエールズ時代からベイスターズを見守り続ける村瀬秀信さんが書いた一冊、「4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史」。

タイトルの通り、弱いホエールズとベイスターズの球団史に踏み込んだ力作です。

弱いベイスターズの真っ只中にいた村田

弱いチームを応援するのは大変で、また弱いチームが勝つようになるのも大変なこと。

負けて、負けて、勝って、負けて、勝ちそうだったけどまた負けて。
弱いベイスターズを見ることに慣れているファンの一人でもある村瀬さんが、弱さを直視して書き上げた渾身の一冊でした。

この弱いベイスターズ暗黒期の真っ只中にいたのが、村田修一たちでした。
村瀬さんは選手や関係者から膨大なコメントをかき集め、弱さの歴史を紐解いていきました。

作品内ではファン目線であるがゆえに、村田修一に厳しい言葉を綴る部分もありました。個人的には、一番多いのでは?というくらいに。

村瀬さんだけでなく、横浜ファンは村田に期待しました。暗黒期からベイスターズを引っ張り上げてくれる存在として、村田に想いを託しました。村田も2007年、08年と2年連続でホームランキングに輝くなど、個人としてはタイトルも獲得しました。それでも、ベイスターズの順位は一向に上がりませんでした。

1年目から主力として活躍し、良くも悪くも目立つ存在だった村田は、ほどなくして敗戦の責を背負わされる存在になっていきました。僕も当時の横浜ベイスターズの試合を観に行ったときに、野次や罵声を何度も耳にしました。それに対して、村田や横浜の選手がヒートアップして応戦したこともありました。

この本でも村田や当時の選手に対して厳しい論調が多いのですが、この本の良いところは弱いチームを強くしようと思って書いた本ではない点。
もちろん強くなってほしいからこそ、痛烈な批判もあるのでしょうが、かと言って弱いチームを糾弾し、非難する本でもないと思います。

なぜ弱いのか、その敗北の歴史を勇気を持って振り返り、負けし勇者たちを振り返る。弱くてもなお、ベイスターズを応援してしまう自分がいる現実。
ベイスターズが好きだからここまで調べ、書けたのだと思いますし、ベイスターズが好きだからその作業はとてもつらかったことと思います。

7年ぶりに応援歌を歌った横浜ファン

2011年、村田は「優勝したい」とフリーエージェントで巨人に移籍します。
横浜で厳しい批判に晒され続けた男は、文字通り横浜の敵としてジャイアンツのユニフォームでプレーすることになり、2012年からセ・リーグを3連覇する大きな原動力として活躍しました。

そして奇しくも、村田が去ったベイスターズは巨人が3連覇を果たす裏で中畑清監督が種を蒔き、アレックス・ラミレス監督が花を咲かせ、2016年、17年とクライマックスシリーズに進出。昨年は日本シリーズにも進出しました。村瀬さんの本が出版されてから3年が経った後です。
強くなったベイスターズのファンたちは、村田たちが在籍していた暗黒期をようやく過去のものにできたのだと思います。

村田たちの時代には届きそうもなかったポストシーズンを戦う喜びを知り、そこで敗れる悔しさを知ったベイスターズファン。
彼らは9月28日の東京ドームで、引退する村田にベイスターズ時代の応援歌を歌いました。そこに、わだかまりやネガティブな感情は全く見えませんでした。

どんな気持ちでベイスターズのファンがあの応援歌を歌ったのか、この本を読むと少しわかるような気がします。
単行本の刊行は2013年でしたが、2016年に刊行された文庫版では村田があとがきで後日談を語っています。ぜひ、彼が現役生活に別れを告げた今だからこそ、読んでほしい。そんな一冊です。

ベイスターズで、ジャイアンツで、栃木で。時に不器用な一面を見せながらも豪快な打撃で魅了してくれた村田修一。

本当にお疲れ様でした。

(文中・村田修一さんの敬称略)

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